「連帯保証人には絶対なるな」と言われることがありますが、これを理解するには連帯債務と保証債務という言葉を理解する必要があります。

債務は、自分で借りたお金や契約に基づく返済義務です。保証は、債務者が返済できない場合に代わりに返済する義務を負うことです。これを踏まえて、説明していきます。

連帯債務と分割債務

連帯債務(れんたいさいむ)とは、複数の人が同じ借金や義務を負い、全員がその債務全額を支払う責任を持つ状態です。これに対して、分割債務(ぶんかつさいむ)は、借金をする人たちがそれぞれの「負担部分」(それぞれが支払うべき金額)だけ支払う義務を負います。この違いを踏まえて、連帯債務を説明します。

例えば、Aさん、Bさん、Cさんの3人が一緒に100万円を借りた場合、分割債務では、Aさんは30万円、Bさんは30万円、Cさんは40万円というように、それぞれの負担部分が決められています。お金を貸した人(債権者)は、Aさんには30万円しか請求できず、全額を請求することはできません。

一方、連帯債務では、Aさん、Bさん、Cさん全員が100万円全額を支払う義務を持っており、誰に対しても全額を請求することができます。たとえば、債権者がAさんに100万円全額を請求することも可能ですし、BさんやCさんに全額を請求することもできます。

もしAさんが100万円全額を支払った場合、他のBさんやCさんは支払う必要がなくなりますが、Aさんは他の人に「自分の負担部分以外の金額を返してほしい」と「求償」(きゅうしょう)を求めることができます。たとえば、Bさんの負担部分が30万円、Cさんの負担部分が40万円の場合、Aさんはそれぞれに対してその金額を請求する権利があります。

このように、連帯債務では債権者が確実にお金を回収できるようにするため、全員に全額を請求できる仕組みが取られています。一方、債務者間では、負担部分に基づいて求償することで公平が保たれています。

連帯債務の絶対効

連帯債務の「相対効」と「絶対効」は、連帯債務者の一部に起こった出来事が他の連帯債務者にどのように影響するかを示す考え方です。これを簡単に説明します。

まず、相対効(そうたいこう)とは、ある連帯債務者にだけ影響する出来事のことです。例えば、Aさん、Bさん、Cさんが連帯債務者で、Aさんだけが債権者(お金を貸した人)と特別な取り決めをして、返済期間を延長してもらったとします。この場合、BさんやCさんにはその取り決めは影響せず、Aさんだけがその条件の変更を受けます。つまり、ある債務者にだけ効果が及ぶのが「相対効」です。

一方、絶対効(ぜったいこう)は、ある連帯債務者に起こった出来事が他の全員にも影響する場合です。例えば、Aさんが全額を支払ったら、BさんやCさんももう支払う必要がなくなります。これは、全員に同じ効果が及ぶため「絶対効」と呼ばれます。

つまり、相対効は一部の人にだけ影響すること、絶対効は全員に影響することを指します。ここで覚えるべきは絶対効となる事由です。代表的なものに①弁済、②相殺、③更改、④混同があります。それ以外(時効など)は相対的効力しかないと覚えることができます。

  1. 弁済:これは、誰かが債務を全額支払うことです。例えば、Aさんが全額を返済した場合、BさんやCさんもその返済義務から解放されます。全員に影響が及ぶため、弁済は絶対効の一例です。
  2. 相殺:これは、債務者が債権者に対して別の債権を持っている場合、その分をお互いの債務と債権を打ち消すことで、借金を減らすことです。Aさんが債権者に100万円を借りていて、同時に債権者がAさんに50万円の債務を負っている場合、その50万円分が相殺されます。この場合、BさんやCさんもその分減額されるため、相殺も絶対効に該当します。
  3. 更改:これは、古い債務を新しい債務に切り替えることです。たとえば、Aさんが債権者と新しい契約を結んで、100万円の債務を別の条件で支払うことにした場合、この新しい契約が成立した時点で、他の連帯債務者も影響を受けます。
  4. 混同:これは、相続などで債務者と債権者が同じ人になってしまう場合です。例えば、Aさんが債権者からその債権を買い取ってしまった場合、Aさんの債務は消滅し、同時にBさんやCさんも債務を負わなくなります。

以上が絶対効となる主な事由です。これらは全員に影響を与えるため、他の連帯債務者にも効果が及ぶのが特徴です。一方、これら以外の取り決めや特別な条件変更は、相対効として特定の連帯債務者にしか影響しません。

相殺について補足説明

AがBとCに対して100万円を貸し付けたとします。このとき、BもAに対して100万円を貸していた場合、AとBはその100万円を相殺することができます。しかし、もしAとBが相殺を行わなかった場合、AはCに対して100万円を請求することができる場合があります。

このとき、Cは連帯債務者ですが、全額を返済する必要はありません。Cの負担部分は50万円であるため、Cは自分の負担部分である50万円だけを支払えば良く、それ以上の金額については支払いを拒むことができます

保証債務

保証債務とは、誰かが借金や契約を結んだとき、その人が支払いできない場合に代わりに返済する責任を引き受けることです。保証人は、借りた人が返せなかった場合に代わってお金を返す役割を持ちます。

例えば、Aさんが銀行から100万円を借りるとき、銀行がAさんの返済能力を心配した場合、Bさんが「Aさんが返せなかったら、私が代わりに返します」と約束します。これが保証債務です。

Aさんが無事に返済すれば、Bさんは何もしなくても大丈夫です。しかし、Aさんが返せなかった場合、銀行はBさんにお金を請求でき、Bさんが代わりに返済することになります。

このとき、保証契約は銀行とBさんとの間で結ばれ、書面または内容を記録した電磁的記録によって締結されなければ効力を持ちません。

また保証債務には付従性随伴性の性質があります。これは抵当権を含む担保物権と共通する内容になります。それぞれの説明としては以下のようになります。

付従性と随伴性

保証債務は、元の借金(主たる債務)があって初めて成立します。たとえば、AさんがBさんにお金を借りている場合にのみ、Cさんが保証人となることができます。借金がなくなると保証債務も消滅します。これが付従性です。なお債務が増えた場合、保証債務が増えることはありません

また保証債務は、借金に「ついていく」性質があります。たとえば、Aさんの借金がBさんからCさんに譲渡された場合、保証人が保証する相手もCさんに変わります。借金が移動すると保証も移るのが随伴性です。

権補充性(保証人の抗弁)

保証人の抗弁権には、「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」があります。これらは、保証人が支払いを求められたときに使える特別な権利です。これらの権利は、保証人がいきなり大きな負担を負わされないようにするためのものです。これらをまとめて補充性といい、付従性、随伴性に加えて保証債務の特徴になります。

催告の抗弁権

催告の抗弁権は、保証人が「まず借りた本人に支払いを請求してください」と主張できる権利です。たとえば、Bさんが銀行からお金を借り、Cさんが保証人になっている場合、Bさんが返済しないときには、まず銀行がBさんに返済を請求するのが基本です。しかし、Bさんに請求する前に銀行が保証人Cさんに請求してきた場合、Cさんは「先にBさんに請求してください」と言うことができます。これが催告の抗弁権です。

検索の抗弁権

検索の抗弁権は、保証人が「借りた本人に支払える財産があるか確認してください」と主張できる権利です。たとえば、銀行がBさんの代わりにCさんに返済を求めた場合、Cさんは「Bさんにまだ財産があるなら、その財産を使って返済させてください」と言えます。つまり、借りた本人に財産があるなら、それを使わせるように要求できるのが検索の抗弁権です。

保証債務の範囲は広い

保証債務は、単に借金の「元本」だけを保証するものではありません。保証人は、借金の返済に加えて、さまざまな関連する義務も保証します。これが抵当権とは異なる点です。わかりやすく説明します。

抵当権の場合、銀行が貸したお金(元本)が返済されないときに、担保として提供された不動産などを売って、そのお金で元本を回収します。しかし、抵当権は元本に限られた権利で、他の義務(たとえば損害賠償や修理費など)は対象になりません。

一方、保証債務はもっと広範囲の責任を負います。保証人は、借金の元本だけでなく、たとえば借金が返済されなかったことによる損害や、建物を借りた場合の原状回復義務(元の状態に戻すこと)なども含めて責任を負います。つまり、保証人は「借金以外にも発生した費用や損害」をもカバーする必要があります。

保証債務は、元本だけでなく、返済に関連するあらゆる追加の義務を含むため、非常に広い範囲の責任を負うのが特徴です。

連帯保証人

連帯保証人とは、借りた人が返済できない場合に、その人と同じ責任を負って返済する人のことです。通常の保証人と違い、連帯保証人は借金をした人(主債務者)が返済できないかどうかを確認しなくても、すぐに返済を求められる立場にあります。

例えば、Bさんが銀行から100万円を借りるとき、Cさんが連帯保証人になると、Bさんが返せなかった場合、銀行はCさんに直接「お金を返してください」と請求することができます。銀行は、まずBさんに請求する必要もなく、CさんにもBさんと同じ責任を負わせることができます。

連帯保証人は、通常の保証人と違い、「催告の抗弁権」や「検索の抗弁権」を使えません。つまり、「まずBさんに請求してください」や「Bさんに財産があるか確認してください」といったことは言えず、いきなり全額を請求されることがあります。

このように、連帯保証は通常の保証と異なり、銀行にとって借金の回収を確実にするための重要な手段です。そのため、連帯保証人になるには大きな責任が伴います。

連帯保証は、通常の保証債務より債権者(銀行等)に有利