不動産賃貸業において築古戸建て物件のトイレリフォームについて、費用を抑えつつも入居者に喜ばれるリフォームを実現するためのポイントをまとめました。

1. トイレリフォームの注意点

1.1. 現状の把握と問題点の特定

配管の種類と状態

築古物件の場合、古い配管(鉛管など)が使用されている可能性があり、交換が必要になる場合があります。特に排水管の位置や勾配によっては、移設が困難な場合もあります。

鉛管は柔らかく、専用の技術と工具が必要なため、DIYでの修理や交換が非常に難しい配管です。実際にトイレ交換の作業中、鉛管に直面し、作業が中断されるケースもあります。

このような状況では、鉛管の取り扱いに慣れた水道業者に依頼する必要がありますが、対応可能な業者が限られているうえ、作業費用が高額になる傾向があります。ある事例では、鉛管への対応を含むトイレ交換工事の見積もりが約8万円(便器本体代を除く)にのぼったとの報告もあります。

  • 床・壁・天井の状態: 水漏れや結露による腐食、カビ、シロアリ被害がないか確認が必要です。下地の補修や交換が必要な場合は追加費用が発生します。
  • 電気配線: ウォシュレット設置を前提とする場合、コンセントの有無や容量を確認します。古い物件の場合、アース付きコンセントがないこともあります。
  • 換気: 換気扇の有無、機能、排気経路を確認します。特に窓がない場合は、換気扇の設置が必須となります。
  • 給排水管のタイプ:
  • 床排水(アジャスター付き・なし): 便器の下から直接床に排水するタイプ。配管位置の調整が容易なアジャスター付きが多い。
  • 壁排水: 便器の背面から壁に排水するタイプ。マンションなどで多く見られる。
  • 排水芯の確認: 既存の便器の排水口から壁までの距離(排水芯)を正確に測る必要があります。これを間違えると新しい便器が設置できません。多くの国産便器は200mmまたは200〜500mmの可変式に対応しています。

1.2. 法規・規制の確認

  • 建築基準法: 増改築を伴う場合や、配管経路を大幅に変更する場合、建築確認申請が必要となる場合があります。
  • 自治体の条例: 浄化槽から公共下水道への接続、節水型トイレへの推奨など、地域ごとの条例を確認しましょう。

1.3. 入居者ニーズの考慮

  • ウォシュレットの設置: 今や必須と考える入居者が多いため、設置を強く推奨します。温水洗浄機能だけでなく、暖房便座機能も備わっているものが良いでしょう。
  • 手洗い器の有無: トイレ内に独立した手洗い器があるか、または便器一体型手洗い器で十分か検討します。スペースが限られる場合は、便器一体型が一般的です。
  • 収納スペース: トイレットペーパーや清掃用品を置ける程度の簡単な収納があると喜ばれます。吊り戸棚やニッチ(壁のくぼみ)などが考えられます。
  • 清潔感と明るさ: 壁紙や床材は、清潔感があり、明るい色合いを選ぶと良いでしょう。防汚・抗菌機能のある素材もおすすめです。

2. リフォーム費用を安く抑える工夫

2.1. 便器選びのポイント

  • 量産型・普及価格帯のモデルを選択: 最新の機能(自動洗浄、フタの自動開閉など)が満載のモデルではなく、基本的な洗浄・節水機能が充実した普及価格帯のモデルを選びましょう。TOTOの「ピュアレストQR」、LIXILの「アメージュZ」などが代表的です。
  • 組み合わせ便器: 便器本体、タンク、便座(ウォシュレット)が別々になっている「組み合わせ便器」は、一体型便器に比べて安価な傾向があります。将来的に便座のみの交換が容易である点もメリットです。
  • アウトレット品・展示品・型落ち品の活用: 運が良ければ、設備業者やホームセンターのアウトレット品、型落ち品を見つけられることがあります。
  • 海外製便器の検討: 輸入建材を扱う業者から、機能はシンプルながら安価な海外製便器が見つかることもあります。ただし、補修部品の入手難易度や修理対応には注意が必要です。

2.2. 工事内容の見直し

  • DIY可能な範囲の検討:
  • 内装(壁紙・床材)の張り替え: 既存の壁紙の上から重ね張りできるタイプや、クッションフロアであれば比較的DIYしやすいです。ただし、下地の状態によっては専門業者に依頼すべきです。
  • ペーパーホルダー、タオル掛けの交換: 既存の穴を活用すれば、比較的容易に交換できます。
  • 照明器具の交換: 引っ掛けシーリングなど簡単なタイプであればDIYも可能ですが、電気工事士の資格が必要な作業はプロに任せましょう。
  • 既存の配管を極力活かす: 排水芯の変更や給水管の移設は、工事費用が大きく跳ね上がる要因です。既存の配管位置に合った便器を選び、移設を避けるのが賢明です。
  • オプション工事の削減: 手洗いカウンターの設置、収納棚の造作、ニッチの設置など、必須ではないオプション工事は見送ることで費用を抑えられます。
  • 内装工事をシンプルに: 壁紙や床材は、汎用的な素材や色を選び、シンプルなデザインにすることでコストを抑えられます。高機能なタイルやエコカラットなどは高価になりがちです。

2.3. 業者選びと交渉

  • 複数の業者から相見積もりを取る: 3社以上から見積もりを取り、工事内容と費用を比較検討しましょう。
  • 地元の中小工務店やリフォーム業者を検討: 大手リフォーム会社よりも、中間マージンが少なく、小回りが利く場合があります。
  • 閑散期を狙う: 業者にとっての閑散期(春や秋の引越しシーズン以外)であれば、価格交渉に応じてもらいやすい場合があります。
  • 工事内容を具体的に伝える: どのようなリフォームを望んでいるのか、予算はどの程度かなど、具体的な要望を伝えることで、業者側も適切な提案をしやすくなります。
  • 「施主支給」の検討: 便器やウォシュレット、照明器具などを自分で購入し、工事のみを業者に依頼する「施主支給」も費用を抑える一つの方法です。ただし、業者によっては嫌がる場合や、故障時の責任分解点が不明確になるリスクがあるため、事前に相談が必要です。

2.4. その他

  • 補助金・助成金の確認: 自治体によっては、節水型トイレへの交換や、バリアフリー化のリフォームに対して補助金や助成金が用意されている場合があります。事前に確認してみましょう。
  • 中古品の活用(注意が必要): メルカリやヤフオクなどで新品同様の中古便器が出品されていることもありますが、配管の適合やメーカー保証の有無、取り付けの難易度などを考慮すると、リスクが高い場合もあります。

以上の点を踏まえ、入居者に選ばれる魅力的な物件づくりと費用対効果のバランスを考慮したリフォーム計画を進めてください。