限界費用は生産量を1単位増加させたときに追加的に発生する費用。グラフでは費用曲線の接線の傾きとなる。

総費用曲線が3次関数でS字になると、生産量が多くなるほど利益がマイナスになる領域があります。

 

微分を使用して、利潤最大化条件を導出する方法

販売個数をx個として、ミクロ経済学では総費用曲線は\( ax^3 + bx^2 + cx + d \)と表現されることが多く、これは右上がりの3次関数になります。この総費用曲線を微分すると限界費用曲線(\( 3ax^2 + 2bx + c\))となります。

また利潤最大化を考えるとき、利潤(π)=売上-費用に当てはめます。販売個数をx個、販売価格をPとしたとき、売上=\( P・x\)となります。したがって利潤はπ=\( P・x\)−(\( ax^3 + bx^2 + cx + d \))となり、右下がりの3次関数になります。

右下がりの3次関数ではグラフ形状は「↘︎↗︎↘︎」となり利潤最大化には極大点を探す必要があります。このとき\( π=P・x\)−(\( ax^3 + bx^2 + cx + d \))を微分することで極大点を求めることができます。\( π’=P\)−(\( 3ax^2 + 2bx + c\))であり、\( π’=0\)で極大となります。つまり価格=限界費用であるときが利潤最大化条件となります。

平均費用(AC)の導出

総費用曲線は\( ax^3 + bx^2 + cx + d \)とすると、平均費用は生産量(x)で割ればよい。そのため平均費用\( AC = ax^2 + bx + c + \frac{d}{x} \)となり、下に凸の2次関数になる。

平均可変費用(AVC)の導出

総費用曲線は\( ax^3 + bx^2 + cx + d \)とすると、固定費dを無視しすることで可変費用\(VC=ax^3 + bx^2 + cx\)となる。平均可変費用は生産量(x)で割ればよいため、平均費用\( AVC = ax^2 + bx + c\)となる。平均費用同様に下に凸の2次関数になる。

限界費用、平均費用、平均可変費用の関係

与えられた総費用曲線は次のように表されます:

$$ TC(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d $$

ここで、d は固定費用(Fixed Cost, \( FC \))を表し、残りの部分が可変費用(Variable Cost, \( VC \))を表します。つまり、

$$ VC(x) = ax^3 + bx^2 + cx $$

平均可変費用は可変費用を生産量 x で割ったものです:

$$ AVC(x) = \frac{VC(x)}{x} = \frac{ax^3 + bx^2 + cx}{x} = ax^2 + bx + c $$

限界費用は総費用曲線の x に関する微分で表されます:

$$ MC(x) = \frac{dTC(x)}{dx} = \frac{d(ax^3 + bx^2 + cx + d)}{dx} = 3ax^2 + 2bx + c $$

平均可変費用曲線の頂点(最小点)は、AVC(x)x で微分してその値がゼロとなる点で決まります。

$$ \frac{dAVC(x)}{dx} = \frac{d(ax^2 + bx + c)}{dx} = 2ax + b $$

頂点における x の値 x* は、

$$ 2ax^* + b = 0 \quad \Rightarrow \quad x^* = -\frac{b}{2a} $$

この頂点 x* における限界費用を求めます。

$$ MC(x^*) = 3a\left(-\frac{b}{2a}\right)^2 + 2b\left(-\frac{b}{2a}\right) + c $$

計算すると、

$$ MC(x^*) = 3a\frac{b^2}{4a^2} – \frac{2b^2}{2a} + c = \frac{3b^2}{4a} – \frac{2b^2}{2a} + c = \frac{3b^2 – 4b^2}{4a} + c = -\frac{b^2}{4a} + c $$

同じ x*AVC(x) に代入してみます。

$$ AVC(x^*) = a\left(-\frac{b}{2a}\right)^2 + b\left(-\frac{b}{2a}\right) + c = \frac{ab^2}{4a^2} – \frac{b^2}{2a} + c = \frac{b^2}{4a} – \frac{b^2}{2a} + c = -\frac{b^2}{4a} + c $$

したがって、限界費用 MC(x^*) と平均可変費用の頂点 AVC(x^*) は同じ値 \( -\frac{b^2}{4a} + c \) を取ることがわかります。これにより、限界費用曲線が平均可変費用曲線の頂点を通過することが証明されました。