試験直前に何を勉強するか困る人は多いです。ここでやってはいけないのが、教科書や問題集を最初から解き直すことです。試験直前では理解済みの内容を繰り返しても得点は伸びません。

そこで苦手問題や忘れやすいポイントに絞って復習するのが効率的と言えます。ただ自分自身の苦手問題や過去に間違った問題を把握できる人は少ないです。ここでは私自身が試験直前期に復習した内容について記載していきます。

丁寧な解説は省略しているためご了承ください。理解不足なポイントを発見することが目的の記事になります。

仕訳

「現金が増加したときは借方、減少したときは貸方」のように、簡単な内容を復習しても意味がありません。間違いやすいポイントに絞って復習しましょう。

小切手の勘定科目は当座預金?現金?

小切手を振り出したときは当座預金から支払われるため、小切手で支払いを行った場合の勘定科目は「当座預金」になります。例えば、買掛金10万円を小切手で支払った場合は以下のようになります。

借方 貸方
買掛金 10万円 当座預金  10万円

ただし、小切手を受け取ったときの勘定科目は「当座預金」でなく「現金」になることに注意が必要です。例えば、売掛金10万円を小切手で支払われた場合の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
現金 10万円 売掛金  10万円

さらに注意点として、自己振出小切手を受け取ったときの勘定科目は「現金」ではなく「当座預金」になります。例えば、売掛金10万円を以前自社が降り出した小切手を受け取った場合の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
当座預金 10万円 売掛金  10万円

このように小切手の仕訳は受け取ったときの処理において「他人振出」「自己振出」の2パターンがあります。

当座預金の残高がマイナスになるとき

当座預金では当座借越契約を結んでおけば残高を超える金額を引き出すことができます。例えば、当座預金残高が50万円のとき、買掛金100万円を小切手を振り出して支払いました。このときの仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
買掛金 100万円 当座預金  100万円

ここで注意するポイントは期中仕訳では当座預金の残高を気にしなくて良いことです。当座預金口座がマイナスになったとしても、そのまま仕訳します。

ただし決算になったときは差額を訂正する必要があります。これについては後述の決算整理仕訳を確認してください。

現金過不足の日本語に注意

現金の帳簿残高と実際有高が異なることが発覚したとき「現金化不足」という損益勘定によって実際有高に合わせます。決算整理仕訳において「現金化不足」は「雑損・雑益」に振り替えられるのが基本です。

ただし日本語が不自由な場合、帳簿と実際有高のどちらが多いか間違ってしまうケースがあります。それだと仕訳を理解できていても意味がありません。以下のうち、借方に「現金化不足」を計上するのはどれでしょう。

  1. 帳簿残高が実際有高より少ない
  2. 帳簿残高が実際有高より多い
  3. 実際有高が帳簿残高より少ない
  4. 実際有高が帳簿残高より多い
答えを確認
正解は「1,4」です。ここを間違うと勿体無いので、慎重に問題文を読み解きましょう。

先方負担の仕入諸掛は立替金にする

商品を仕入れるとき、送料や手数料がかかります。そうした費用を処理する勘定項目を「仕入諸掛」といいます。当社負担の仕入諸掛は仕入に含めて仕訳を行うのは基本です。

例えば10万円の商品を仕入れたとき、自己負担の発送料が1万円を現金で支払ったとします。このときの仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
仕入 11万円 現金  11万円

このように仕入に含めて計上します。ただし面倒なのが、相手負担(先方負担)の発送料を立て替えて支払ったときです。先方負担の仕入諸掛を当社が負担する場合は「立替金」という勘定科目を使います。

例えば10万円の商品を仕入れたとき、先方負担の発送料が1万円だったとします。この発送料を自社が立て替えた場合の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
仕入 10万円 現金  11万円
立替金 1万円

このように、仕入に含めることはできません。このように仕入にかかる費用(仕入諸掛)は自己負担か先方負担かを見極める必要があります。なお、この問題について面倒な考え方を次で説明します。

先方負担の仕入諸掛は買掛金と相殺できる

もし上記の取引を掛けで仕入れ、発送料は現金で立て替えていた場合、仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
仕入 10万円 買掛金  10万円
立替金 1万円 現金 1万円

この状況を冷静に考えてみましょう。買掛金10万円は自社が支払う予定の金額であり、立替金は先方が支払う予定の金額です。お互いにツケが発生しているため、以下のように買掛金と立替金は相殺することができます。

借方 貸方
仕入 10万円 買掛金  9万円
現金 1万円

先方負担の仕入諸掛があった場合、通常は「立替金」を勘定科目として使います。しかし選択肢に「立替金」が存在しない場合は買掛金との相殺を問われていることを疑いましょう。

内金、手付金の勘定科目

商品を購入するとき、金額の一部を事前に支払うことがあります。この代金を「内金」「手付金」と言います。内金を支払ったときの勘定科目は「前払金」であり、内金を受け取ったときの勘定科目は「前受金」になります。

内金や手付金といった別名があるため気をつけましょう。また経過勘定における「前払費用」「前受収益」とも用語が似ているため、別物として区別しておく必要があります。

例えば、10万円の商品を購入するとき、手付金(内金)として1万円を現金で支払いました。この日の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
前払金 1万円 現金  1万円

後日、商品の受け渡しが完了したので、仕入れの仕訳を行います。なお残額を掛けで購入したときの仕訳を考えてみましょう。なお商品売買が完了するまで前払金は資産になります。

答えを確認
借方 貸方
仕入 10万円 買掛金  9万円
前払金 1万円

買掛金は前払金を差し引いた額で記入します。また商品売買が完了したときは前払金は相殺されることになります。

敷金と礼金の違いと勘定科目

不動産を借りるとき「敷金・礼金」が発生することがあります。これらは意味を理解すれば勘定科目が分かります。

敷金は家主に預けておく保証金であり、家賃の不払いなどがあれば、敷金から補填されます。一方で何事もなければ返却されます。つまり費用ではなく資産になり、勘定科目は「差入保証金」となります。

一方で礼金は謝礼として家主に支払うお金であり、返却されることはありません。そのため費用であり勘定科目は「支払手数料」または「地代家賃」となります。

例えば事務所として利用するオフィスの賃借経営をしたとき、敷金10万円、礼金5万円、1ヶ月分の家賃8万円を普通預金から支払ったときの仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
差入保証金 10万円 普通預金 23万円
支払手数料 5万円
支払家賃 8万円

出張費用を事前に渡したときの仕訳

出張前に旅費の概算額を渡す場合があります。このとき費用の内容が確定していないため、「仮払金」という勘定科目で処理します。例えば出張前に現金3万円を渡したときの仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
仮払金 3万円 現金  3万円

次に出張から帰ってきたときを考えます。出張後は仮払金を削除することを最初に考えます。続いて費用や収益の情報を追加します。例えば、以下の例題を考えてみましょう。

【例題】

従業員が出張から帰り、旅費交通費として2万円を支払い、商品販売にかかる手付金1万円を現金で受け取ったことを報告された。なお出張前に旅費の概算額3万円を渡していた。

借方 貸方
仮払金  3万円

考え方として、まずは仮払金を解消します。続いて、内訳を考えていきます。旅費交通費という費用が発生しているため借方に記載します。また前受金(収益)が発生しているため貸方に記載します。さらに残金2万円を現金で受け取っているので現金(資産)を借方に記載します。

借方 貸方
旅費交通費 2万円 仮払金 3万円
現金 2万円 前受金 1万円

このように出張から帰ってきたら、まずは仮払金を解消することを忘れてはいけません。

貸倒処理後に回収

貸倒処理後に期をまたいでから回収したら収益にする。このときの勘定科目は「償却債権取立益」になります。

借方 貸方
現金 30万円 償却債権取立益 30万円

帳簿

日計表と試算表の違い

日計表は合計試算表と同じ記載方法。

https://www.bookkeep.info/boki9/syou3-10-2.html

商品有高帳の注意点

商品有高帳は商品ごとに在庫変動を記入し、数量や金額を管理する帳簿になります。例えば以下は商品Aの商品有高帳になります。仕入や売上によって在庫が変動したときに記入します。

ここで間違いやすいポイントを3つ紹介します。まず注意点①として、4/5に商品Aを単価500円で40個販売したとします。このとき、払出単価は200円が正しいです。商品有高帳では売上時でも仕入原価を記載します。

なお仕入原価は直前の残高に記載されている単価をそのまま使えば良いです。上記では4/1の残高の単価が200円なので4/5の単価も200円になります。

注意点②として商品の払出単価を決める方法には「移動平均法」「先入先出法」などがありますが、ここでは移動平均法の計算方法を説明します。

4/10に単価280円で100個の商品Aを仕入れたとき「全体の仕入単価はいくらになるか」を考えます。

\begin{split}
商品の合計仕入額&= 12,000+28,000 \\
&=40,000
\end{split}

\begin{split}
商品の合計個数&= 60+100\\
&=160
\end{split}

\begin{split}
商品の単価&= 40,000÷60\\
&=250
\end{split}

このように「全体の仕入単価はいくらになるか」を考える方法を移動平均法と言います。

注意点③として、月末には次月繰越として帳簿を締めます。このときの考え方は「月末は在庫をゼロにする」というイメージを持っておけば良いです。つまり、在庫160個(単価250円)を全て払い出すことになります。したがって払出の項目に記載します。残高の最終行を払出の最終行にコピペすると考えても良いです。

精算表、貸借対照表・損益計算書

決算整理仕訳の解答順序に注意

簿記3級の第3問では、決算整理仕訳を実行した後に、精算表や貸借対照表・損益計算書を作成する問題が出題されることがあります。このとき、伏線回収を行わなければ計算ミスが起こるケースがあります。例えば以下のような決算整理仕訳を考えてみましょう。

  1. 売掛金1,000円を現金で回収したが、記帳し忘れていたので決算整理時に処理した。
  2. 売掛金の期末残高に対して1%を貸倒引当金として設定したい。なお差額補充法を採用する。
【精算表】 借方 貸方
売掛金 10,000円
貸倒引当金 10円

ここまでが問題として与えられていたとしましょう。結論から説明すると、1番が難しいため2番の仕訳から考えると間違えます。

1番の決算整理仕訳において売掛金が1,000円加算され、その後2番で売掛金の1%を計算するため、順序が重要になります。期末の売掛金残高は11,000円であり、1%の100円を貸倒引当金に追加し、合計110円になります。したがって決算整理仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
売掛金 1,000円 現金 1,000円
貸倒引当金繰入 100円 貸倒引当金 100円

このように伏線が仕込まれた問題があるため解答順序は「分かるところから」ではなく「順番に」するのが良いでしょう。

当期純利益は計算しない

決算整理仕訳後に精算表を作成し、当期純利益を計算する問題が出題されます。しかし、当期純利益の正解にたどり着くには、それまでの計算過程が全て正解している必要があります。また計算量も多いため、ミスが多くなります。

こうした特徴があるため、当期純利益の計算問題はコスパが悪いことになります。したがって、当期純利益の問題はパスして他の問題に時間を当てるほうが効率的と言えます。