【簿記3級】経過勘定の決算整理仕訳でのコツ

簿記3級の学習範囲で「経過勘定の決算整理仕訳」があります。具体的には「未収収益・未払費用・前払費用・前受収益」などの勘定科目が登場します。簿記初心者であれば、誰もが苦手意識を感じるポイントであり、私自身も最初は意味不明でした。

ただ意味を理解し、問題を解くことで経過勘定のコツに気づくことができました。簿記3級で経過勘定を攻略する方法について説明していきます。

決算整理仕訳を理解する

経過勘定は決算整理仕訳で登場する勘定科目になります。そもそも、仕訳は期中仕訳と決算整理仕訳の2パターンがあることを理解しましょう。

期中仕訳は日々の取引データを記録するため、毎日仕訳を行います。一方で決算整理仕訳では決算のために微調整が必要な処理をする仕訳作業になります。

未収収益や未払費用などの経過勘定が登場するのは決算整理仕訳であることは絶対に覚えておきましょう。なお決算整理仕訳には経過勘定以外にも減価償却費や貸倒引当金の計上などもあるので、そちらも確認しておきましょう。

費用の増加は借方、収益の増加は貸方

この考え方は簿記の超基本ですが、暗記していないと経過勘定の理解は難しいです。また人によっては、「なぜ費用が増えると借方なのか?」「なぜ収益の減少は借方なのか」と深く考えることで、逆に苦手意識を持ってしまいます。

しかし、本質ではない問題に対して時間を使ってはいけません。以下のように場所を5個覚えれ済む話なので、頭を使わず暗記しましょう。そうすることで、より重要な勘定科目についての理解に繋がります。

ここで仕訳の例題を考えてみましょう。火災保険料1万円を現金で支払ったときの仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
火災保険料 10,000 現金  10,000

火災保険料(費用)が増えたので借方に記載し、現金(資産)が減少したので貸方に記載します。

続いてもう一つ例題を考えましょう。普通預金によって利息1,000円を現金で受け取ったときの仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
現金 1,000 受取利息 1,000

現金(資産)が増えたので借方に記載し、受取利息(収益)が増えたので貸方に記載します。上記の例題ができるようになれば経過勘定についても簡単に理解できます。

決算整理仕訳で経過勘定を扱う意味

それでは、いよいよ経過勘定について説明していきます。日々の期中仕訳だけでは決算時にズレが生じてしまいます。それを修正するために決算整理仕訳を行います。

具体的には「火災保険料を2年分払っている」状況があった場合、期中仕訳は2年分を計上しているのに対して、決算は1年単位で集計するためズレが発生します。そこで決算では火災保険料は1年分だけ計上するよう微調整が必要になります。

その微調整の方法、つまり決算整理仕訳における経過勘定のやり方について難しく感じることがあります。例えば、「未払費用」「前払費用」といった勘定科目を貸借のどちらに記載すれば良いかというポイントです。

しかし意味を理解し、仕訳を書く順番を意識すれば簡単です。

前払費用(費用を先に支払うケース)の仕訳方法

保険料、家賃などの費用を前払しているとき使用する勘定科目です。具体例とともに確認しましょう。4月1日に2年分の火災保険料1万円を支払ました。このときの期中仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
保険料 10,000 現金  10,000

上記の仕訳は2年分を計上していますが、3月31日の決算においては1年分の火災保険料を計上することになります。要するに火災保険料1年分(5,000円)を減らしたいという思考回路になります。つまり期中仕訳の逆側に保険料を記載すれば良いです。

借方 貸方
保険料 5,000

ただ仕訳において貸借は一致させる必要があります。つまり、借方に何か勘定科目をいれなけれいけません。このとき使うのが「前払〇〇」になります。ここでは火災保険なので前払保険料になります。

借方 貸方
前払保険料 5,000 保険料 5,000

前払費用が貸借のどちらに記載するかを覚えるのではなく、まずは払いすぎた保険料(費用)を減らしたいので期中仕訳の逆側に保険料を記載し、残った借方に前払保険料を記載する流れになります。

未払費用(費用を後に支払うケース)の仕訳方法

保険料、家賃などの費用を後払しているとき使用する勘定科目です。具体例とともに確認しましょう。翌月末日に家賃1ヶ月分(1万円)を現金で後払いするとき、3月31日の期中仕訳は以下のようになります。なおここでの家賃は費用です。

借方 貸方
3/31 支払家賃 10,000 現金  10,000

上記は2月分の家賃を3月末に支払っていることに注意しましょう。ここで決算となりましたが、3月分の家賃はまだ払っていません。

しかし、実質的には家賃は発生しており決算に組み込む必要があります。そこで以下のような決算整理仕訳が必要です。

借方 貸方
3/31 支払家賃 5,000

仕訳では貸借を一致させます。つまり貸方に何か勘定科目が必要になります。この時使うのが「未払〇〇」になります。ここでは家賃なので未払家賃になります。

借方 貸方
3/31 支払家賃 5,000 未払家賃  5,000

未払費用を貸借どちらに記載するかを覚えるのではなく、まだ払っていない家賃(費用)を払ったことにしたいので決算整理仕訳で支払家賃を追加します。その相手に未払家賃を記載する流れになります。

前受収益(収益を先払いされるケース)

不動産、利息などの収益を先払いで受け取るとき使用する勘定科目です。具体例では不動産収入として前月末日に家賃1ヶ月分(1万円)を現金で前払いするとき、3月31日の期中仕訳は以下のようになります。なおここでの家賃は収益です。

借方 貸方
3/31 現金 10,000 受取家賃  10,000

このとき支払われた家賃は翌月分(4月)の家賃になります。ここで決算となりましたが、4月分の家賃は翌期に計上するため、多くもらいすぎています。そこで、以下のように家賃を減らすことを考えましょう。

借方 貸方
3/31 受取家賃 10,000

期中仕訳の逆側に受取家賃を計上することで、多くもらいすぎた家賃をマイナスすることができます。しかし貸借を一致させるため、貸方に何か書かなければいけません。ここで使用するのが「前受〇〇」です。

借方 貸方
3/31 受取家賃 10,000 前受家賃 10,000

前受家賃を貸借どちらに記載するかを覚えるのではなく、すでに受け取った家賃(収益)をまだ受け取っていないことにしたいので、決算整理仕訳で受取家賃を減らすことを考えましょう。その相手に前受家賃を記載する流れになります。

未収収益(収益を後払いされるケース)

不動産、利息などの収益を後払いで受け取るとき使用する勘定科目です。具体例では利息として翌月末日に家賃1ヶ月分(1万円)を現金で後払いするとき、3月31日の期中仕訳は以下のようになります。なおここでの家賃は収益です。

借方 貸方
3/31 現金 10,000 受取家賃  10,000

このとき支払われた家賃は翌月分(2月)の家賃になります。ここで決算となりましたが、3月分の家賃はまだ貰っていません。そこで、以下のように家賃をもらったことにする方法を考えましょう。

借方 貸方
受取家賃 10,000

ただ仕訳において貸借は一致させる必要があります。つまり、借方に何か勘定科目をいれなけれいけません。このとき使うのが「未収〇〇」になります。ここでは家賃なので未収家賃になります。

借方 貸方
3/31 未収家賃 10,000 受取家賃 10,000

未収家賃を貸借どちらに記載するかを覚えるのではなく、すでにまだ受け取っていない家賃(収益)をもらったことにしたいので、決算整理仕訳で受取家賃を増やすことを考えましょう。その相手に未収家賃を記載する流れになります。

暗記ポイント

簿記3級の試験では勘定科目は選択肢で記載されるため勘定科目自体を覚える必要はありませ。しかし初心者の場合は「前払・前受」「未払・未収」が混乱するはずです。そうした時間を節約するには以下のように暗記すればいいです。

払った(費用) もらった(収益)
先に 前払〇〇 前受〇〇
後に 未払〇〇 未収〇〇

丸暗記が苦手な場合は漢字の意味から推測しましょう。例えば、「払」という文字があれば、費用を調節する勘定科目になります。払いすぎた費用、あるいはまだ払っていない費用を決算で調節するときに「前払〇〇・未払〇〇」を使います。

また「受・収」という漢字があれば、収益になります。もらいすぎた収益、あるいはまだもらっていない収益を決算で調節するときに「前受〇〇・未収〇〇」を使います。

前払家賃、未払家賃、前受家賃、未収家賃の混乱を防ぐ

保険料や法定福利費は「費用」として理解しやすいです。つまり決算整理仕訳では前払法定福利費、あるいは未払法定福利費を使うことになります。ただ、家賃の場合は間違いやすいです。費用にも、収益にもなり得るからです。

自分が不動産を借りる場合は費用であり、誰かに不動産を貸す場合は収益になります。つまり先払家賃、後払家賃、前受家賃、未収家賃のそれぞれが存在することになります。

ここで、上記の暗記法を使って「先払家賃、後払家賃」が費用であることが理解できるでしょうか。残った「前受家賃、未収家賃」は収益になります。

前払利息、未払利息、前受利息、未収利息の混乱を防ぐ

同様に利息についても費用、収益のいずれにも該当します。つまり、自分が借金した場合は費用として利息が発生します。逆に誰かに貸金したときは収益として利息が発生します。

決算時において調整が必要であれば「前払利息、未払利息、前受利息、未収利息」のいずれかを使って決算整理仕訳を行いますが、費用と収益を間違ってはいけません。

「払」が入っている「前払利息、未払利息」が費用であり、残った「前受利息、未収利息」は収益になります。

まとめ

期中仕訳では費用や収益が実際にあっタイミングで行われます。しかし、先払や後払いのケースでは期中仕訳に正確に反映できない場合があります。そこで決算整理仕訳で誤差を調節することになります。

このとき使う勘定科目を経過勘定といい、「前払〇〇・未払〇〇・前受〇〇・未収〇〇」の4パターンが存在します。

ここで「払」という文字が入っていれば費用を調節するための勘定科目になります。また家賃や利息は費用にも収益にもなり得るので、間違えないよう注意が必要になります。