建築基準法の基本

建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備、用途に関する最低限の基準を定めることで、国民の生命、健康、財産を守ることを目的としています。

建物に関する基準には集団規定単体規定があります。集団規定は、建物が密集して建てられる場合、日当たりや防火対策など、周囲の環境やほかの住民との調和を図るための規定です。一方、単体規定は、1つの建物に対して適用される規定であり、全国のすべての建築物が対象となります。この規定は、建物の安全性や居住性を確保するために必要な技術的な基準です。

建築基準法の適用除外

建築基準法には適用されない場合もあります。例えば、国宝や重要文化財に指定された建物には、この法律が適用されません。

また、建築基準法が改正されて新しいルールができた場合でも、すでに建っている建物や工事中の建物には、その新しいルールは適用されません。このような建物を既存不適格建築物と呼びます。

ただし、既存不適格建築物を増築、改築、大規模修繕・大規模模様替えをする場合には一定の緩和措置のもと、改正法が適用されます。

建築確認

建築確認は主に「設計が建築基準法にに適合しているか」を確認するプロセスです。

特定行政庁とは、都道府県知事や、建物の審査や検査を行う公務員(建築主事や建築副主事)を任命している市区町村の長のことです。都道府県には必ず建築主事が配置されています。特定行政庁は、建築行政の最高機関として、是正命令などの強い権限を持っています。

建築確認の要・不要

建築確認は、すべての建物に必要なわけではありません。建築確認が必要になるのは、次のような場合です。

  • 一定の特殊建築物(その用途に使う床面積が200㎡超)
  • 大規模建築物
  • その他の一般建築物

一定の特殊建築物(用途床面積200㎡超)とは不特定多数が出入りするような建築物であり、映画館、病院、ホテル、共同住宅(マンション)、学校、倉庫などがありますが、事務所は含まないことに注意が必要です。

一定の特殊建築物(用途床面積200㎡超)であれば「新築、増改築・移転、大規模修繕・模様替え、用途変更」すべての場合に建築確認が必要になります。

大規模建築物に該当するかどうかは、木造か非木造かによって基準が異なります。木造建築であれば「高さ13m超、軒高9m超、3階以上、延べ面積500㎡超」のいずれかに該当すれば大規模建築になります。非木造の場合は「2階以上、延べ面積200㎡超」のどちらかに該当すれば大規模建築になります。

大規模建築では用途変更以外の「新築、増改築・移転、大規模修繕・模様替え」について建築確認が必要になります。

増改築・移転の場合の例外

防火地域や準防火地域以外の建築物では、狭い範囲での増改築や移転の場合、建築確認が不要になることがあります。具体的には、増改築や移転の面積が10㎡以内であれば、建築確認は必要ありません。

用途変更の例外

用途変更で建築確認が必要になるのは、一定の特殊建築物(用途に使われる床面積が200㎡を超えるもの)が対象です。そのため、大規模建築や一般建築物への用途変更の場合には、建築確認は不要です。

また、「類似の用途」間での用途変更も建築確認は不要とされています。例えば、特殊建築物であっても「ホテルから旅館」「博物館から美術館」への変更がこれに該当します。

建築確認の手順

建築確認の申請は、建物の所有者(建築主)が建築主事や民間の指定確認検査機関に提出します。構造計算が必要な場合には、その建物が基準に合っていることを証明する「適合判定通知」も一緒に提出します。構造計算は、高さ60m以下の建物で、大規模な建物(例えば、4階以上の鉄骨造や高さ13m以上の木造など)の場合に必要です。ただし、高さ60mを超える建物は、より厳しい大臣認定が必要となり、構造計算適合性判定は不要です。

申請を受けた建築主事などは、その建物が建築基準法の規定に適合しているか確認し、問題がなければ「確認済証」を交付します。確認には決められた期間があり、特殊建築物や大規模建築の場合は35日以内、それ以外の建物については7日以内に確認を行う必要があります。

確認済証が交付されると、工事を開始することができます。工事が完了したら、4日以内に完了検査の申請を建築主事や民間の指定確認検査機関に提出します。申請を受けてから7日以内に「検査済証」が交付されます。

検査済証が交付されると、建物を使用することができます。しかし、例外として、市長や知事などの特定行政庁や建築主事が安全上問題ないと判断した場合は、検査済証が交付される前でも仮に使用することが認められます。また、検査済証の申請をしてから7日が経過した場合は、検査済証がなくても建物の使用が可能になります。

単体規定

単体規定は、1つの建物に対して適用される規定であり、全国のすべての建築物が対象となります。この規定は、建物の安全性や居住性を確保するために必要な技術的な基準です。ここでは重要なポイントに絞って紹介します。

まず大規模建築物については構造計算によって安全性が確かめられる必要があります。高さ60mを超える建築物、あるいは高さ60m以下でも以下のいずれかを満たす建築物については大規模お建築に該当します。

木造建築 非木造建築
高さ13m超、軒高9m超、3階以上、延べ面積500㎡超 2階以上、延べ面積200㎡超

また大規模建築物の主要構造部については原則として一定の技術的基準に適合し、国土交通大臣が定めた構造方法を使用する必要があります。具体的には、主要構造部分に木材やプラスチックなどを使用する場合、耐火性を持った構造にしなければなりません。ただし、この基準は特に規模が大きい大規模建築に限られ、以下の基準のいずれかを満たす場合に適用されます。

延べ面積3000㎡超、地階を除く階数が4以上、高さ16m超、高さ13m超の特殊建築物(用途:倉庫、自動車車庫、自動車修理工場等)

また耐火・準耐火建築物以外の建築物で、延べ面積が1,000㎡超の建築物は防火壁や防火床で床面積を1,000㎡以内に区切る必要があります。住居、学校、病院などに地下室を作る場合は壁や床の防湿措置など、衛生上必要な技術的基準に適合する必要があります。

居室の採光と換気についても規定があります。住宅の居室では床面積に対して1/7以上の窓や開口部を設ける必要があります。開口部については床面積に対し1/20以上の割合が必要になります。また天井の高さについて、居室の天井は平均2.1m以上必要です。

有害物質に関する規定では、すべての建築物でアスベストの使用が禁止されています。また、居室のある建物ではクロルピリホスの使用も禁止されています。ホルムアルデヒドについては、禁止物質ではありませんが、その発散量を基準以下に抑える必要があります。

高さ20m超の建築物は避雷針の設置が必要、高さ31m超の建物には非常用の昇降機の設置が必要です。屋上広場や2階以上のバルコニーには高さ1.1m以上の手すり壁や柵、金網の設置が必要です。

このほか様々な単体規定があり、全国共通のルールです。しかし、地方公共団体は条例によってさらに安全上、防火上、衛生上必要な制限を付加することができます。

集団規定

 

道路規制

建築基準法では、道路はいくつかの種類に分けて定義されています。具体的には、以下に該当するものが道路として認められます。これらの基準に当てはまらないものは「通路」と呼ばれます。

幅員4m以上
種別 通称
42条1項1号 道路法による道路
42条1項2号 開発道路
42条1項3号 既存道路
42条1項4号 計画道路
42条1項5号 位置指定道路
幅員4m未満
種別 通称
42条2項 2項道路
42条3項 水平距離指定道路
42条6項 6項道路
接道義務

建築基準法第43条には「接道義務」に関する規定があります。建物を建てる敷地は、原則として2m以上の幅で道路に接している必要があり、これを接道義務と言います。

ただし、周囲に広い空き地がある場合など、特定行政庁が交通や安全、防火、衛生の面で問題がないと判断し、建築審査会の同意を得て許可された場合は、接道義務が免除されることがあります。

また、利用する人が少ない建物で、その用途や規模が国土交通省の基準に合っていて、特定行政庁が問題ないと判断した場合も、接道義務が免除されることがあります。

利用者少数の場合は「建築審査会の同意」不用

また接道義務を厳しくするため、条例で指定されることもあり、地域によってそれぞれ異なります。例えば以下は京都市の建築基準条例によって定められた間口の基準になります。

竿部分の長さ(L) 間口の幅
L≦20m 2m
20m<L≦35m 2+(L-20)/15m
35m<L 4m
2mより短くなる(緩和される)ことは無い
建築制限

道路にはさまざまな制限があります。例えば、道路の内側には建物を建てることができません。ただし、いくつかの例外も定められています。

たとえば、道路の地下であれば建築物を立てても問題ありません。また公益上必要な建物(公衆便所、派出所など)、アーケードなどの公共用歩廊特定行政庁が支障ないことを認め、建築審査会の同意を得て許可した場合は建築可能になります。

建築基準法の壁面線は、建物を道路や隣の敷地からどれだけ離して建てるかを決めた線で、建物の位置を整えるためのルールです。例えば、「道路から3メートル離す」と決められた場合、その線より内側に建物を建てる必要があります。柱や塀も壁面線を超えて作ることはできませんが、高さ2m以下であれば例外として許されます。また、地下部分や、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可した歩廊の柱なども例外となります。

用途制限

都市計画法では、地域の特性に応じた土地利用を決める「用途地域」がありますが、建築基準法では、建物の使い方に関する「用途制限」が設けられています。

具体的には、建築基準法では「第一種低層住居専用地域」は「低層住宅の良好な住環境を保護するための地域」と定義されています。そして、建築基準法の「用途制限」により、例えばこの地域ではボーリング場のような建物は建てられないと規定されています。

すべての用途地域内で建築できる

宗教関係施設、保育園、幼保連携型認定こども園、診療所、公衆浴場、交番、老人福祉センター、児童厚生施設。間違いやすいポイント(幼稚園、病院、老人ホームは規制がある)

高専以外すべての用途地域で建築できる

住宅、共同住宅(マンション)、寄宿舎、下宿、店舗事務所兼住宅、老人ホーム障碍者福祉ホーム、図書館、美術館、博物館。間違いやすいポイント(工業地域ではなく、工業専用地域)

建蔽率と容積率

建蔽率は、敷地面積に対して建築物の建築面積が占める割合のことを指します。一方、容積率は、敷地面積に対する建築物の延床面積の割合を示します。

建蔽率は、都市計画区域や準都市計画区域内で用途地域ごとに最高限度が指定されています。これにより、各用途地域の特性に応じた街並みの形成が可能となります。

例えば、商業地域の建蔽率の上限は80%です。ただし、特定の条件を満たす場合、この上限を引き上げることができます。一例として、特定行政庁が指定する角地であれば、建蔽率の最大値に10%が加算されます。

また、防火地域内の耐火建築物や、準防火地域内の耐火・準耐火建築物も、建蔽率が10%加算されます。ただし、商業地域や第一種住居地域など、もともと建蔽率の上限が80%に設定されている地域では、防火地域内の耐火建築物や準防火地域内の耐火・準耐火建築物に限り、建蔽率は最大100%まで引き上げられます。

さらに、特例として建蔽率の規制が除外されるケースがあります。巡査派出所(交番)、公衆トイレ、公共用歩廊(アーケード)は、特定行政庁の許可がなくても建蔽率の規制が除外されます。

また、公園、広場、道路などに建築された建物で、特定行政庁が安全面、防火面、衛生面で問題がないと認めて許可したものも、建蔽率の規制が除外されます。

土地の中で建蔽率の規制の異なる場合、加重平均を算出することで、建蔽率の上限を計算します。例えば、建蔽率80%の土地が50㎡、建蔽率50%の土地が100㎡ある場合、加重平均を算出すると以下の通りです。80*50/50+100+50*100/50+100=60%となります。

容積率は、都市計画区域および準都市計画区域内において、用途地域ごとに最高限度が指定されています。これにより、各用途地域の特性に合った街並みが形成されます。

容積率は、場合によってはその最高限度が制限されることがあります。たとえば、前面道路の幅が12m未満の場合、容積率が小さく設定されることがあります。具体的には、住居系用途地域では道路幅員(m)×40%で計算され、もともとの容積率の制限と比較して、より小さい方が採用されます。一方、住居系用途地域以外では、幅員(m)×60%で計算されます。

たとえば、商業系用途地域(住居系ではない)の前面道路幅が4mの場合、4×60%=240%となり、容積率はこの240%ともともとの制限を比較して、小さい方が適用されます。もし前面道路が2本ある場合は幅員の広い方で計算します。

土地の中で容積率の規制の異なる場合、計算方法は建蔽率と同じく加重平均を使用して計算します。この場合も前面道路が2本ある場合は幅員の広い方で計算します。

建物の中には、延べ床面積に含めなくても良い部分があります。たとえば、エントランス、共用階段、共用廊下、エレベーターホールなどです。これらの面積が広くても、容積率には影響しません。

また、地下階の天井が地盤面から1m以内にある場合、その部分が住宅等の用途で使用される場合に限り、床面積の1/3までは延床面積に含めなくても良いとされています。