簿記3級では仕訳問題が出題されますが、固定資産売却における仕訳に苦手意識を持つ人は多いです。この仕訳を正解するには減価償却、間接法、未収入金といった複数の要素を理解する必要があるからです。
逆に言えば、固定資産売却の仕訳を完璧に理解できれば、その他の問題に対しても対応できるようになります。ここではゼロから固定資産売却の仕訳を解説していきます。
固定資産を購入したときの仕訳を理解する
固定資産売却を理解するには購入時の仕訳を理解する必要があります。例えば以下の例題について考えてみましょう。
【例題】期首(4/1)に70万円の備品を現金で購入した。
仕訳は以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
備品 | 70万円 | 現金 | 70万円 |
これは基礎レベルです。簿記3級を受験する場合は1秒以内に答えられるようにしましょう。次に固定資産の場合は減価償却についても考えなければいけません。
減価償却の仕訳(直接法・間接法)を理解する
パソコンや自動車は時間経過によりボロボロになり壊れてしまいます。つまり業務に使用する固定資産は時間経過によって資産価値が減っていきます。このように時間経過によって固定資産の価値を減らす必要があります。
これと同時に、減った分の資産は費用として計上することができます。この費用のことを減価償却費と言います。なお減価償却費を計上するのは決算時になります。
このように減価償却には上記2つのポイントがあり、仕訳に反映させることになります。具体的には以下のようになります。
【例題】期首(4/1)に70万円で購入した備品について、期末(3/31)に減価償却費を計上した。なお耐用年数は7年、残存価格は0円とします。ただし直説法で記載してください。
仕分けは以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 10万円 | 備品 | 10万円 |
減価償却費という費用が増加したので借方に記載し、備品という資産が減少したので貸方に記載します。これは以下の仕訳ルールを暗記していれば簡単です。
上記のように「備品」を貸方に計上し、資産価値を減少させる方法を直接法と言います。備品を購入したときの仕訳と合わせて記載すると以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
備品 | 70万円 | 現金 | 70万円 |
減価償却費 | 10万円 | 備品 | 10万円 |
こうすれば備品の価値が10万円減り、その分が費用として計上されていることが分かります。このように固定資産の価値を減らす方法を直接法といいます。これを集計すると備品価値は60万円になり、それが貸借対照表へと反映されます。
ただし、貸借対照表だけを見ると「備品60万円」とだけ記載されるため「70万円で購入し10万円は減価償却した」という情報が抜けてしまいます。また減価償却費は損益計算書に記載されるため、別紙を参照することになります。
これを解決するために間接法が使われます。間接法では備品(固定資産)から価値をマイナスする代わりに「減価償却累計額」という勘定科目を使います。以下の例題で考えてみましょう。
【例題】期首(4/1)に70万円で購入した備品について、期末(3/31)に減価償却費を計上した。なお耐用年数は7年、残存価格は0円とします。ただし間接法で記載してください。
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 10万円 | 減価償却累計額 | 10万円 |
本来なら備品(資産)の価値を減らしたいですが、その代わりに減価償却累計額を使用しています。備品を購入したときの仕訳と合わせて表示すると以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
備品 | 70万円 | 現金 | 70万円 |
減価償却費 | 10万円 | 減価償却累計額 | 10万円 |
これを集計しても備品価格は70万円のままです。貸借対照表は以下のように記載されます。なお現金や売掛金は適当な数値です。
このように貸借対照表が見やすくなるため減価償却費を計上するときは間接法を使うのが一般的です。そのため簿記3級でも間接法で出題されます。
固定資産を売却するときの仕訳
さて固定資産を売却するとき、固定資産の実質的な価値はいくらかを考えることになります。例えば、70万円で購入した備品に対して、すでに10万円の減価償却が済んでいる場合、備品の実質的な価値は60万円になります。
では以下の例題を考えてみましょう。
【例題】取得原価70万円、減価償却累計額10万円の備品を期首(4/1)に60万円で売却し、代金を現金で受け取った。
借方 | 貸方 | ||
減価償却累計額 | 10万円 | 備品 | 70万円 |
現金 | 60万円 |
考える順番とともに説明していきます。まず資産である備品(資産)が減少したので借方に備品70万円を計上します。
次に、これまでの減価償却累計額も清算することになりますが、固定資産の減少が減少すると考えて借方に計上します。最後に現金という資産が増加したので借方に計上します。
固定資産売却益、固定資産売却損が出る場合の仕訳
上記例では備品を60万円で売却できたためシンプルな仕訳でした。しかし金額によっては利益が出たり、損失が出たりします。早速ですが以下の例題を考えてみましょう。
【例題】取得原価70万円、減価償却累計額10万円の備品を期首(4/1)に20万円で売却し、代金を現金で受け取った。
借方 | 貸方 | ||
減価償却累計額 | 10万円 | 備品 | 70万円 |
現金 | 20万円 |
ここまでは上記例と同様に理解できるはずです。しかし、このままでは貸借の金額が一致していません。そこで以下のようにすれば貸借が一致します。
借方 | 貸方 | ||
減価償却累計額 | 10万円 | 備品 | 70万円 |
現金 | 20万円 | ||
固定資産売却損 | 40万円 |
損失が発生したとき(収益が減ったとき)は借方に計上するのが基本です。しかし固定資産売却においては複数の勘定科目が登場するため、貸借を間違いやすいです。
そこで損益以外を記載し、最後に「貸借を一致させるには」と考えて貸借を選べばミスを減らすことができます。続いて、固定資産売却益が出る場合を考えてみましょう。
【例題】取得原価70万円、減価償却累計額10万円の備品を期首(4/1)に90万円で売却し、代金を現金で受け取った。
借方 | 貸方 | ||
減価償却累計額 | 10万円 | 備品 | 70万円 |
現金 | 90万円 |
ここまでは簡単です。しかし、このままでは貸借の金額が一致していません。そこで以下のようにすれば貸借が一致します。
借方 | 貸方 | ||
減価償却累計額 | 10万円 | 備品 | 70万円 |
現金 | 90万円 | 固定資産売却益 | 30万円 |
収益が発生したときは貸方に記載しますが、分からない場合は消去法により貸借を一致させる場所に記載すれば良いです。