企業の収益性を評価する指標としてEBITDAがあります。企業の決算報告、あるいはM&Aにおいて活用される場面が多いです。

読み方はイービットディーエーと読むことが多いですが、EBITDAという文字列だけでは全く意味がわかりません。そこでEBITDAの計算式や活用法について、わかりやすく説明していきます。

EBITDAと営業利益の違い、計算式の意味

EBITDAに類似する指標として営業利益があります。営業利益は損益計算書にも記載される有名な指標であるため、ここを手掛かりにして理解しましょう。

まず100万円を投入して50万円の利益を生み出す事業について、以下のようなイメージ図で考えましょう。

ここで事業の内訳を考えると、営業利益と営業外利益に分けることができます。営業利益は本業による利益であり、営業外利益は不動産賃貸による利益など本業以外の利益になります。これを図にすると以下のようになります。

今回は営業利益について、さらに内訳を考えていきます。ここで「利益=売上−費用」という計算式に着目すると、営業利益の裏には売上と費用が隠れていることになります。例えば以下のようになります。

ここで注意しなければいけないのが減価償却費です。損益計算書では販管費の内訳に減価償却費が含まれますが、実際には金銭のマイナスはありません。

減価償却費は過去に購入した固定資産を部分的に経費として計上しており、「見かけ上の経費」であることに注意が必要です。また減価償却費が存在することで営業利益が変化することも忘れてはいけません。

例えば、「減価償却費がゼロの企業」「減価償却費が60万」について比較して考えてみましょう。なお減価償却費以外の条件は同じです。すると以下のような図になります。

減価償却費の有無によって営業利益が変化することが分かります。上図左の企業では営業利益が発生していますが、右側の企業では営業利益が減価償却費によって潰されています。

つまり営業利益は「本業で稼ぐ力」「減価償却費」の2つの影響を受けてしまう指標であることが分かります。

このため「本業で稼ぐ力」だけにに注目したいとき着目したいとき営業利益を利用するのはイマイチになります。そうした場合、減価償却費を無視すれば良いです。

減価償却費を無視するためにはどうすれば良いか。それは「営業利益+減価償却費」とまとめて考えると減価償却費がゼロだった場合と同じになります。イメージは以下のようになります。

こうすれば、減価償却費が何円であっても「営業利益+減価償却費」は同じになります。このように、減価償却費を無視したいときに使うのがEBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)になります。つまり計算式は以下のようになります。

$$EBITDA=営業利益+減価償却費$$

ここまで読むことで営業利益に減価償却費を足し戻す意味が理解できるはずです。なお減価償却費のルールは国ごとに異なるため、他国間の企業を比較する場合においても減価償却費の影響を除外したEBITDAを収益性指標として使うことがあります。

EBITDAはM&Aにおいて重要視される理由

企業のM&A(合併買収)においてはEBITDAが重視されます。この理由について説明していきます。

例えば、以下のような見通しの企業があったとします。1年目が終了した時点で買収する場合、いくらで買収するのが良いかを考えます。

まず考えることは「2〜3年目でいくら稼ぐか」です。この金額よりやすい値段で購入できれば儲けが出ます。

このとき考える指標としてEBITDAを使うのが正しいです。上記の例では2〜3年目のEBITDAの合計は130万+130万=260万になります。つまり260万円以下で購入できれば儲けが出ます。

ここで営業利益を使うと減価償却費を考慮することになります。しかし減価償却費の原因となった出費は過去のものであり、「2〜3年目でいくら稼ぐか」については無関係です。

こうした理由からM&AではEBITDAを重要視して評価額を決定します。