経営指標の一つにROICがあります。ROICは収益性を評価する指標であり、数値が高いほど収益性が高いと言えます。
しかし経営指標を見るときは、本質的な理解をする必要があります。ROICの分子や分母の意味を本質的に理解しなければ、正しい判断ができません。そこでROICの複雑な計算式について簡単に説明していきます。
ROICの計算式
ROIC(Return On Invested Capital)は日本語では投下資本利益率と言い、計算式にすると以下のようになります。
$$ROIC=\frac{営業利益×(1-実効税率)}{有利子負債+株主資本}$$これだけでは意味不明なので、分子と分母に分けて説明していきます。
ROICの分子は営業利益に着目している
ROICの分子は営業利益×(1-実効税率)となりますが、計算式だけ見ても難しいです。そこでイメージ図を使って説明していきます。企業を「利益を生む箱」に例えると、以下のようなイメージになります。
100万円を事業に投入すると150万円になり、要するに50万円の利益を生み出すことができます。さらに事業の内訳をみると、本業と不動産に分けて考えることができます。イメージとしては以下のようになります。
それぞれが生み出す利益は「営業利益」「営業外利益」となります。ただROICでは営業利益のみに着目するため、営業外利益については無視することになります。そうすることで、営業外利益に左右されず、本業のみに絞った評価が可能になります。
なおROICでは単純な営業利益ではなく、税引後の営業利益に着目します。これを図にすると図にすると以下のようになります。
税引後営業利益はNOPAT(Net Operating Profit After Taxes)とも呼ばれROICの分子になります。ちなみに、銀行への利息(営業外費用)や特別損益は考慮されていません。あくまでも本業に関係する部分だけに着目しているからです。
ROICの分母は有利子負債+自己資本
ROICの分母について簡単に説明すると「税引後営業利益を発生させる元手」になります。要するに企業が資金調達したお金であり、具体的には銀行から借金した有利子負債と自己資本になります。貸借対照表で図示すると以下の部分になります。
なお無利子負債は具体的には買掛金や未払金であり、事業のために最初に用意した軍資金ではなく、途中で発生した負債というイメージを持つといいです。
そのため、無利子負債はROICの計算式から除外することになります。ここまでの流れを1つのイラストにまとめると以下のようになります。
調達資金(有利子負債+自己資本)が少なく、税引後営業利益が大きいほど、効率的に本業で儲けていることになります。これを計算式として表現すると以下のようになります。
$$ROIC=\frac{営業利益×(1-実効税率)}{有利子負債+株主資本}$$
このように順を追って説明すると、ROICの本質的な意味が理解できるはずです。例えば以下のようなポイントが分かります。
- ROICは本業による営業利益に着目し、不動産等の営業外利益は無視する
- 営業利益ではなく税金を引いた後の利益に着目している
- 買掛金や未収金による見かけ上の負債は無視している
まとめ
ROIC(Return On Invested Capital)は本業における収益性指標として利用されます。事業に投入する資金に対して、税引後営業利益の割合になります。
間違いやすいポイントとして、営業外利益は無視していること、営業利益から税金を引いていることが挙げられます。これらに注意してROICを計算するといいです。