目次
物権の基礎
物権は、物に対する直接的な権利で、他人に対しても主張できる特徴があります。たとえば、所有している自転車の所有権は誰に対しても主張できます。これが物権の基本的な性質です。
また自転車を友達に貸した場合、所有権はあなたにありますが、友達は占有権を持ちます。また、他人の土地に家を建てる際は地上権が発生します。このように、物件にはいくつかの種類が存在します。
物権の種類
代表的な物権は所有権で、物を自由に使用・処分できる権利です。また、占有権は物を持っている人が持つ権利です。所有者でなくても占有権は成立します。例えば、泥棒がスマホを盗んだ場合、所有権は泥棒にはありませんが、占有権は泥棒にあります。
物権と債権の違い
なお債権は特定の相手にのみ主張可能であるのに対し、物権は「誰に対しても」主張できます。例えば、BさんがAさんにお金を貸している場合、BさんはAさんにしか返済を求められませんが、Aさんの自転車の所有権は誰にでも主張できます。
占有権
占有権の取得には①現物の引渡し②簡易の引渡し③占有改定④指図による占有移転がありますが、詳細は省略します。
占有訴権とは、物を占有している人がその占有を守るために使える権利です。わかりやすく言うと、占有している物が他人に侵害されたり奪われた場合、訴えて占有を取り戻すことができます。これを占有訴権と言います。占有訴権は、占有している物を守るための手段で、物の所有者でなくてもその物を実際に使っている場合には適用されます。
- 占有保全の訴え
占有を妨害される恐れがある場合に、その妨害を防ぐために訴えを起こします。たとえば、Aさんが自分の土地に侵入される恐れがある場合、侵入を未然に防ぐための措置を求めることができます。損害が発生する前に防止策を取ることが目的です。 - 占有保持の訴え
実際に占有を妨害された場合、妨害行為の停止や損害賠償を請求する訴えです。たとえば、Aさんの土地にBさんが無断で建物を建てて占有を妨害した場合、Aさんはその建物の撤去や損害賠償を求めることができます。この訴えは、妨害が続いている間、または妨害が終わった後1年以内に行う必要があります。 - 占有回収の訴え
占有している物を奪われた場合、その物の返還と損害賠償を求める訴えです。たとえば、Aさんが持っている土地がBさんに無断で奪われた場合、Aさんはその土地を返すよう訴えることができます。この訴えは、物が奪われてから1年以内に起こさなければなりません。
所有権の相隣関係
所有権とは、自分のものを自由に使ったり、利益を得たり、売ったり処分したりする権利です。このようになんでもできるため、物権の王様と表現されることもあります。
しかし、この権利は無制限ではなく、法令によって制限されることがあります。たとえば、周囲の人々との関係を守るために「相隣関係」という規定があります。これは、土地の所有者が隣の土地を使う場合に守らなければならないルールです。所有権に一定の制限を加えるイメージを作っておくと良いです。
- 隣地の使用 :土地の所有者が、隣地を使って境界線にフェンスや建物を建てたり、修理したりする場合、必要な範囲で隣地を使うことができます。ただし、住んでいる家の場合、住人の許可を得なければ立ち入ることはできません。
- 境界の調査 :境界線にある印(境界標)を調べたり、測量したりするためにも、隣地を使うことができます。
- 木の枝の切り取り :隣の土地から自分の土地に伸びている木の枝を切るためにも、隣地に入ることができます。(隣地の木を切る権利は別に設定されています)
ただし、これらの場合でも、①日時や場所を事前に通知すること、②方法は隣地にできるだけ損害が少ないものを選ぶ、③損害が出たら弁償する必要があります。なお、通知が難しい場合でも、立ち入り後にはすぐに(遅滞なく)知らせなければなりません。
ライフライン設備設置・使用権継続的給付を受けるための設備の設置権等)は、設備設置権と使用権に分かれます。設備設置権は、水道管や電気ケーブルなどライフラインに必要な設備を、他人の土地に設置できる権利です。たとえば、自宅に水道を引く際、隣の土地に水道管を通す必要がある場合、この権利で設置が可能です。使用権は、ライフラインに関わる他人の設備を使用する権利です。たとえば、すでに隣の土地に設置された水道や電気設備を使う場合、この使用権に基づいて利用できます。
囲繞地通行権とは、他の土地に囲まれて道路に出られない土地(袋地)の所有者が、周りの土地(囲繞地)を通って外に出られる権利です。たとえば、Aさんの土地が四方をBさんの土地に囲まれている場合、AさんはBさんの土地を通る権利を持っています。
ただし、この通行権には条件があり、通ることでBさんの土地に損害が出た場合、Aさんは償金を支払わなければなりません。この償金は、通行に伴う損害に対して、毎年支払うことが可能です。ただし、通路を新しく作るための費用はこの償金には含まれません。
用益物権
用益物権は、他人の物を使う権利です。主なものは次の通りです:
- 地上権:他人の土地に建物を建てる権利。
- 永小作権:他人の土地で農業をする権利。
- 地役権:他人の土地を通行する権利。
- 入会権:共同体で土地を利用する権利。
地上権とは、他人の土地を借りて、その上に建物や構造物を建てることができる権利です。この権利を持つ人は、土地の所有者ではありませんが、自由にその土地を使って建物を建てたり、地面を掘って施設を設けたりすることができます。地上権は、土地の所有者が変わっても権利が続くため、借地契約よりも強い権利と言えます。例えば、工場を建てるために他人の土地を使いたい場合、地上権を設定して、その土地を長期間利用することができます。
一方、永小作権とは、他人の土地で農作物を育てるために土地を利用する権利です。この権利は長期間にわたり、土地の所有者が変わっても影響されず、農地を安定して利用できるのが特徴です。永小作権者は、土地で農作物を育て、その収穫物を自分のものにすることができます。例えば、農家が他人の土地を借りて稲作をする場合、この永小作権を設定すれば、長期間にわたってその土地で農業を続けることができます。
地役権とは、他人の土地を自分の土地の利益のために使うことができる権利です。たとえば、自分の土地が道路に直接面していないとき、隣の土地を通るための通路として利用する権利が地役権です。この権利は、土地を使う人だけではなく、土地自体についているので、その土地が他の人に売られても権利は続きます。
担保物権
担保物権は、お金の返済を保証するための権利です。代表的なものは以下の通りです:
- 留置権:お金を払ってもらうまで物を返さない権利。
- 先取特権:他の債権者に優先して物から弁済を受ける権利。
- 質権:担保にした物を返してもらうためにお金を返す義務がある権利。
- 抵当権:土地や建物を担保に、お金を借りる権利。
上記の中では抵当権が最も重要です。また、他の担保物権についても、抵当権との違いを理解しておくと良いでしょう。
質権は、要物契約です。つまり、質権を成立させるには目的物を債権者に引き渡すことが必要です。ただし、債権に質権を設定する場合は、引き渡しではなく、当事者間の合意のみで効力が生じるため、この場合は諾成契約となります。
質権の目的物は、譲渡可能なものであれば何でも対象とすることができます。これは、不動産に限らず、動産や債権も含まれます。一方、抵当権は不動産にのみ設定できるため、動産は対象になりません。
不動産を質に入れる場合は「不動産質」と呼ばれます。この場合、抵当権とは異なり、不動産質権者はその不動産を使用したり、そこから収益を得ることが可能です。ただし、管理費用などは不動産質権者自身が負担することになります。これが抵当権との大きな違いです。
留置権とは、AさんがBさんに土地を売ったが代金が支払われないとき、Aさんが「お金を払うまで土地を渡しません」と主張できる権利です。このため、Aさんは土地を競売にかけることは行いません。下がって留置権には物上代位性と優先弁済的効力がありません。
物上代位性とは、担保にしたものが別のものに変わっても担保物権を行使できる性質です。たとえば、Aさんの家が火災で焼失し、保険金が支払われる場合、Bさんはその保険金に担保物権を行使できます。留置権にはこの性質がありません。
優先弁済的効力とは、他の債権者よりも先にお金を返してもらう権利です。AさんがBさんにお金を貸して返済できない場合、AさんがBさんの土地に抵当権を持っていれば、その土地を売ったお金は他の債権者より先にAさんに支払われます。Aさんは土地を売らず持っているため、留置権にはこの性質はありません。
先取特権とは、特定の債権者が他の債権者に優先して債務者の財産から弁済を受けることができる権利です。日本の民法において、先取特権は法定担保物権の一つであり、特定の事情に基づいて自動的に発生します。抵当権は当事者間の合意によって効力を発揮する点が異なります。
たとえば、AさんがBさんに車の修理を頼んで、Bさんが修理を終えました。しかし、Aさんがお金を払えなかったとします。このとき、Bさんには「修理代を先に払ってもらうまで、この車を渡しません」という権利が生まれます。これが動産先取特権の一例です。Bさんは他の債権者よりも優先して修理代を回収できるのです。
一方、抵当権と比べると少し違います。抵当権はたとえば、Aさんが家を担保にして銀行からお金を借りる場合に使われます。Aさんが返済できないと、銀行はその家を売って借金を回収します。しかし、抵当権は事前に「この家を担保にします」と契約しないと成立しません。
つまり、先取特権は法律に基づいて自動的に発生するのに対して、抵当権は事前に契約して設定する必要があります。また、先取特権は動産(車など)や不動産に対しても自動的に発生しますが、抵当権は基本的に不動産にしか設定できません。
物権変動
物権変動とは、物権の発生、変更、消滅のことを指します。たとえば、Aさんが車を買った場合、車の所有権がAさんに移り、これが物権変動です。物権変動は、基本的に当事者間の意思表示だけで効力が生じます。つまり、合意した時点で物権が移動します。ただし特約があればその取り決めに基づいて物権が変わる場合もあります。例えば、代金引き落としと同時に物権変動が成立など。
ただし、第三者に対しては意思表示だけでは物権変動の効力は及びません。不動産であれば登記が必要であり、動産であれば引渡しが必要になります。こうした内容について、以下で説明していきます。
公示の原則
物権変動は意思表示だけで成立しますが、第三者から見て誰がその物の所有者か分からないことがあります。そのため、物権変動を公に知らせることが必要です。これを「公示の原則」といいます。たとえば、動産(持ち運びできるもの)では占有(物の引き渡し)が公示方法です。車を買った時、実際に車を受け取ることが所有権が移動したという公示になります。
不動産の場合は、登記(法的な手続き)によって公示します。土地や建物を買ったとき、その所有権を誰でも確認できるよう登記簿に登録することで、公示が完了します。
公信の原則
公信の原則とは、公示された情報を信じた人を保護するための原則です。たとえば、動産では公示された情報が真実であると信じて取引をした人が保護されます。
ただし、不動産の登記については、この公信の原則は適用されません。不動産の登記に誤りがあった場合、その誤った情報を信じて取引した人が必ずしも保護されるわけではないということです。たとえば、登記上はAさんが所有者とされていても、実際の所有者がBさんであれば、Bさんが所有権を主張できます。
車の売買を例にすると、AさんがBさんに車を売った場合、Bさんが車を受け取れば、その時点でBさんが所有者になります。また、土地を購入した場合、登記簿に自分の名前を登録することで、第三者に対して「この土地は私のものです」と主張できるようになります。
不動産物権変動の対抗要件
対抗要件とは、物権を第三者に対して主張するために必要な条件です。AさんがBさんに家を売る場合、当事者間では意思表示だけで物権変動が成立しますが、第三者に対してその所有権を主張するには対抗要件が必要です。
対抗要件の重要性
物権を第三者に主張するためには、証明手段が必要です。家や土地などの不動産では、「登記」がその役割を果たします。登記をすることで、誰が所有者かを公に証明でき、第三者に対してもその権利を主張できるようになります。
二重譲渡と対抗要件
二重譲渡とは、Aさんが同じ家をBさんとCさんに売った場合です。この場合、先に登記をした方が優先され、所有権を主張できます。つまり、登記が対抗要件となり、早く手続きを済ませた人が所有者として認められます。
対抗要件が不要な場合
不動産の場合、物権(所有権など)を主張するには登記が必要ですが、状況によっては物権を主張できます。イメージとしてはズルして物権を獲得しようとするものに対して、登記なしで所有権を対抗できるということです。具体的には以下のような第三者に対抗できます。
- 背信的悪意者:権利が他人にあると知りながら、困らせる人。
- 詐欺や脅迫を行った人:不正な手段で物件を取得しようとした者。
- 実質的無権利者:偽造書類で登記を行った人や、権利を持たない者。
- 不法行為者:不動産を毀損したものや不法占拠者など。
- 債権者:差し押さえ権を持つ者。
例
AさんがBさんに家を売った後、Cさんにも売った場合、Bさんが先に登記をすれば所有者として優先されます。仮にCさんが詐欺で家を取得したなら、Bさんが登記していなくても、Cさんの不正行為が証明されればBさんの権利が守られます。
またAさんがBさんに家を売った後、Cさんが不法占拠した場合、Bさんは登記していなくても、Cさんに対して所有権を主張することができます。
相続
Aさんが土地を所有している状態で亡くなり、その土地をBさんが相続した場合、Bは新たに登記しなくても、土地の取得を第三者に対抗することができます。これは相続による物権変動が、特別な登記手続きを必要としないためです。
一方、Aさんが亡くなる前に、その土地をCさんに売却していた場合、CさんはBさんに対して登記なしで所有権を主張できます。これは、物権変動が基本的に当事者間の意思表示だけで成立するという原則に基づいています。つまり、AさんからBさんに相続によって権利が移ったとしても、Bさんが当事者となるため、CさんはBさんに対しても所有権を主張できるのです。
ただし、遺産分割や遺贈といった特別なケースでは、Bさんは登記をしなければ第三者に対して所有権を主張することができません。たとえば、Aさんの遺言でBさんではなくDさんが土地をもらうことになっていた場合、Dさんはその土地を登記しないと、Bさんが所有権を主張することを防げません。遺産分割や遺贈は、通常の相続とは異なり、登記をしないと第三者に対して権利を守れないという例外があるのです。
取消しと登記
不動産の売買後に詐欺や脅迫で契約が取り消されると、所有権は元の所有者(Aさん)に戻ります。しかし、その物件が第三者(Cさん)に転売されていた場合、AさんはCさんに物件の返還を求めることができます。ただし、Cさんが詐欺や脅迫を知らずに正当に購入した「善意の第三者」であれば、返還する義務はありません。
また、Bさんが契約取消後にCさんへ物件を転売していた場合、AさんとCさんのうち、どちらが先に登記を行ったかで所有権が決まります。そのため、Aさんは物件を取り戻すために、できるだけ早く登記をし直すことが重要です。
取得時効と登記
取得時効とは、他人の土地を一定期間占有し続けることで、その土地の所有権を取得できる制度です。たとえば、BさんがAさんの土地を長期間占有した結果、取得時効が完成した場合、Bさんはその土地の所有者となります。この場合、BさんはAさんに対して登記をしていなくても所有権を主張できます。つまり、当事者間では意思表示だけで物権変動が成立します。
時効が完成する前に、もしAさんが第三者のCさんに土地を売却しても、BさんはCさんに対しても登記なしで所有権を主張できます。これは、Bさんの占有による権利がCさんに対しても有効だからです。
しかし、時効が完成した後、もしBさんがまだ登記をしていない状態で、AさんがCさんに土地を売却した場合、登記を先に行った方がその土地の所有者として認められます。つまり、Bさんが時効によって取得した権利を確実に守るためには、早めに登記を行うことが大切です。
共有
共有とは、1つの物を複数の人が共同で所有することです。例えば、土地を3人で共有している場合、持分が特に定められていなければ均等に分けられます。土地の費用が30万円かかるなら、それぞれが10万円ずつ負担するのが原則です。
共有している場合でも、土地全体を使えます。ただし、使う期間を3等分して、例えば1年間で4ヶ月ずつ交代で使います。もし、1人が1年間ずっと土地を使用する場合は、他の共有者に対して対価を支払うなどの話し合いが必要です。
保存行為・管理行為・変更行為
共有物に関する行為には、3つの種類があります。まず、保存行為(修理など)は、各自が自由に行えます。次に、管理行為(共有物の利用方法や短期貸出、軽微な変更など)は、持分の過半数の同意が必要です。最後に、変更行為(土地の売却や長期貸出、抵当権設定など)は、全員の同意が必要です。
管理行為の一部である短期貸出には、期間が定められています。原則として、土地の賃借権は5年、建物の賃借権は3年までです。この期間を超える場合は、長期貸出とみなされ、変更行為に該当します。
賛否を明らかにしない共有者いる場合
管理行為は持分の過半数の同意が必要でしたが、賛否を明らかにしない共有者がいることもあります。そうしたときは裁判所の決定を得れば、その共有者を無視して残りの共有者の持分の過半数によって管理に関する事項を決定することができます。ただし、軽微な変更を超える場合は管理行為ではなくなるため、全員の同意が必要になります。
共有者が行方不明になっている場合
調査をしても使命やその所在がわからない共有者を所在等不明共有者と言います。このような共有者がいる場合、裁判所の決定を得れば、その共有者を無視して残りの共有者の持分の過半数によって管理に関する事項を決定することができます。ただし、軽微な変更を超える場合は管理行為ではなくなるため、行方不明者以外の全員の同意が必要になります。
共有物の管理制度
持分の過半数の同意があれば、共有物の管理者を選任することができます。管理者は、軽微な変更を含む管理に関する行為を行うことが許されています。しかし、共有物に対して軽微ではない変更を加える場合は、全ての共有者の同意が必要です。
共有物の分割請求
共有物の分割請求とは、複数の人が共同で所有している財産(例えば土地や建物)の共有関係を解消し、それぞれが単独で所有するための手続きです。基本的には協議によって決められますが、競技ができないときには裁判所に分割請求することができます。
例えば、3人で共有している土地を3つに分け、それぞれが一部分を単独で所有する方法を現物分割といいます。しかし、共有物が分割できない場合や、現物分割が適さない場合には、他の方法もあります。たとえば、他の共有者が自分の持分を金銭で買い取る賠償分割や、共有物を売却し、その売却代金を共有者で分け合う競売分割などです。
また、共有者全員の合意があれば、分割をしない約束を結ぶこともできます。これを不分割特約といい、その期限は5年以内と定められています。
もし所在等不明共有者がいる場合、その持分を残りの共有者で取得することができます。また共有物全体を第三者に譲渡することもできます。共有者の一人が持分を放棄したり、死亡して相続人がいないときも同様に残りの共有者に持分が帰属します。
土地・建物管理制度
所有者不明土地・建物の管理制度
所有者が不明または所在がわからない土地や建物の管理についての制度があります。これは、相続登記をしないまま放置された結果、所有者が特定できない土地が増加したことが背景にあります。こうした土地や建物は、放置されると廃墟やゴミ屋敷となり、近隣住民に悪影響を及ぼすことがあります。
そこで、令和5年4月1日から「所有者不明土地・建物の管理制度」が施行されました。この制度では、所有者やその所在が不明な土地や建物について、周辺住民などの利害関係者が地方裁判所に申し立てることで、管理人を選任してもらうことができます。
管理人は、その土地や建物を維持・利用・改善するための措置については裁判所の許可なしに講じることができ、さらに裁判所の許可があれば、売却や取り壊しを行うことも可能です。ただし、この制度はマンションなどの区分所有建物には適用されません。
管理不全の状態にある土地・建物の管理制度
所有者がわかっているものの、適切に管理されておらず近隣住民に悪影響を与えている、またはその恐れがある土地や建物についても、利害関係人が裁判所に申し立てを行うことができます。裁判所は必要に応じて、その土地や建物の管理を行う管理人を選任することが可能です。
選任された管理人は、裁判所の許可を得れば、その土地や建物の売却を行うこともできますが、この許可を得るためには、所有者の同意が必要です。