債権とは、他の人に「何かをしてもらう権利」のことです。例えば、お金を貸すと、貸した人は「お金を返してもらう権利」を持ちます。これが債権です。ただお金を返してもらう権利(債権)を誰かに売却すれば、その債権は移転することになります。これを債権譲渡といいます。

債権は自分の財産であるため、自由に譲渡することができます。また譲渡の時点ではまだ発生していない、将来発生する債権(将来債権)でも譲渡することができます。

債権には「譲渡制限特約」が付いている場合でも、基本的には譲渡は有効です。たとえば、AさんがBさんにお金を貸していて、「この債権は他の人に譲渡しない」という特約があっても、AさんはCさんにその債権を譲渡することが可能です。これは、債権がAさんの財産であるため、自由に譲渡できるという原則があるからです。

債権譲渡できない場合

しかし、例外もあります。もしCさんがこの「譲渡制限特約」の存在を知っていた(悪意)か、注意すれば気づくべきだった(重大な過失)場合、BさんはCさんに対して「私はAさんにしか返済しない」として、債務の履行を拒むことができます。

つまり、特約があっても基本的には債権は譲渡できるけれど、譲受人がその特約を知っていたり見過ごしたりしていた場合には、債務者は支払いを拒否できるという仕組みです。

債権譲渡の対抗要件

債権譲渡における「債務者への対抗要件」というのは、債権が第三者に譲渡されたことを、債務者に対して有効に主張(対抗)するための条件のことです。

具体的には、AさんがBさんにお金を貸していて、その債権をCさんに譲渡した場合、Bさん(債務者)がその譲渡の事実を知らなければ、引き続きAさんに返済してしまう可能性があります。

このような状況を防ぐために、債権を譲渡した場合、債務者であるBさんに対して「この債権はCさんに譲渡された」ということを伝える必要があります。これが「債務者への対抗要件」です。債権譲渡の対抗要件は次の2つのいずれかの方法で満たすことができます。

  1. 債務者への通知
    債権者(Aさん)が、債権を譲渡したことを債務者(Bさん)に通知します。これによって、BさんはCさんに返済すべきだと正式に認識します。なお、CさんがBさんに通知するのは要件を満たさないため注意が必要です。
  2. 債務者の承諾
    債務者(Bさん)が、債権がCさんに譲渡されたことを承諾した場合も、対抗要件が満たされます。

第三者に対する対抗要件

債権譲渡における「第三者への対抗要件」というのは、債権を譲渡した事実を第三者に対して有効に主張(対抗)するための条件のことです。第三者とは、譲渡された債権に関して特別な関係を持つ人、例えば、同じ債権を別の人に譲渡された場合のその人や、債権者の他の債権者などが該当します。

たとえば、AさんがBさんにお金を貸していた債権を、Cさんに譲渡したとします。その後、Aさんが同じ債権をDさんにも譲渡した場合、CさんとDさんのどちらがその債権の所有権を持つかという問題が生じます。このような場合に、どちらの譲渡が優先されるかを決めるのが「第三者への対抗要件」です。

  1. 債務者への確定日付のある通知
    債権を譲渡した際、債務者(Bさん)に「確定日付」(公証役場などで正式に確認された日付)のある書面で通知することが必要です。この「確定日付」は、その通知がいつ行われたかを公的に証明できるものです。
  2. 債務者の確定日付のある承諾
    債務者(Bさん)が確定日付のある書面で債権譲渡を承諾した場合も、第三者に対してその譲渡が有効に主張できます。