請負契約

請負契約は、「何かを作り上げる」という仕事に対して結ばれる契約です。家を建てたり、ウェブサイトを作ったりと、私たちの身の回りには多くの請負契約が存在します。

請負契約では、請負人が仕事を完成させ、その成果物を引き渡すことで、報酬を請求する権利が発生します。このため、目的物の引き渡しと報酬の支払いは、同時に行われるべき関係、つまり「同時履行の関係」となります。これは、双方の公平性を保つための民法上のルールです。

ただし、注文者が依頼した建物が不要になったケースなど、注文者は請負人が仕事を完成させる前であれば、契約を解除することができます。しかし、請負人に損害が生じた場合は注文者は損害賠償をする必要があります。

請負人の担保責任

請負契約における担保責任とは、完成した成果物に欠陥があった場合に、請負人が負う責任のことです。この責任は、売買契約における「契約不適合責任」という規定が適用されます。つまり、売買契約と同様に、成果物が契約内容に適合しない場合、注文者は修補請求や損害賠償請求などを行うことができます。これは、注文者を保護し、安心して取引できるようにするための重要なルールです。具体的には、次のような権利を行使できます。

  1. 注文者の追完請求権
    注文者は、請負人に対して欠陥を修理するように求めることができます。これを「追完請求権」といいます。なお「履行の追完」とは、相手が約束通りに物事を果たしていない場合、きちんと約束通りにしてもらうよう求めることです。
  2. 注文者の代金減額請求権
    請負人に対して欠陥を修理するよう催告しても、欠陥が修理できない場合や修理が十分でない場合、注文者は支払った代金の減額を請求することができます。ただし、履行の追完が不能な場合、履行の追完を拒絶されたときなどのケースでは催告無しに直ちに代金の減額を請求できます。
  3. 注文者の損害賠償請求および解除権
    欠陥により損害が生じた場合、注文者は売主に対して損害賠償を請求することができます。また、重大な欠陥がある場合、注文者は契約を解除する権利も持っています。ただし、解除を行う場合には履行の追完の催告が必要になります。
  4. 担保責任の期間の制限
    担保責任を追及できる期間には制限があります。法律では、通常、注文者が契約不適合を知ったときから1年以内にその旨を請負人に通知しなければいけません。そうしなければ、上記のような減額や損害賠償を請求することができなくなります。なお、この期間制限は種類・品質に関する契約不適合のみに適応されます

委任契約

委任契約とは、ある人が別の誰かに法律行為や事務処理を委託し、相手方がそれを承諾することで成立する契約です。例えば、弁護士に訴訟を依頼したり、税理士に税務申告を依頼したりするケースが該当します。

委任契約の大きな特徴は、原則として無償契約であるという点です。つまり、委託者は受任者に対して報酬を支払う義務はありません。しかし、当事者間の特約によって、有償契約とすることも可能です。例えば、弁護士や税理士に依頼する場合は、通常、報酬を支払うことが一般的です。

委任契約において、仕事を依頼された人(受任者)は、依頼者の利益を守るために、善良な管理者の注意をもって業務を行う義務を負います。これを「善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)」といいます。

これは、自分の財産を管理する時と同じように、社会通念上要求される程度の注意を払って業務を行う必要があるということです。例えば、弁護士が訴訟を代理する場合、税理士が税務申告を行う場合など、専門的な知識や経験を必要とする業務において、この義務が求められます。

委任契約は、当事者間の信頼関係に基づいて成立する契約であるため、法律は比較的柔軟な終了を認めています。

まず、委任契約は、委任者と受任者のどちらからでも、いつでも自由に解除することができます。これを「解除の自由」といいます。ただし、相手方に不利な時期に解除した場合は、損害賠償責任を負う可能性があります。

次に、委任者または受任者のどちらかに、一定の事由が生じた場合、委任契約は終了します。具体的には、以下の3つの事由が挙げられます。

  • 死亡:委任者または受任者が死亡した場合、委任契約は終了します。
  • 破産手続き開始の決定:委任者または受任者が破産した場合、委任契約は終了します。
  • 後見開始の審判:受任者が後見開始の審判を受けた場合、委任契約は終了します。

これらの事由は、委任契約の性質上、当事者間の信頼関係が失われたり、契約の履行が困難になったりするため、法律によって委任契約の終了が定められています。