不動産や動産を他人に貸すとき、「賃貸借契約」と「使用貸借契約」という二つの法律上の形式があります。見た目は似ていますが、契約の解除条件や修繕義務、借り手が死亡したときの扱いなど、重要な違いがあります。本記事では民法の条文をもとに、それぞれの特徴をできるだけわかりやすくまとめました。

修繕義務の違い

賃貸借契約では貸主(家主)が大規模な修繕義務を負い、借主は日常的な小修繕のみを行います(民法605条・606条)。

一方、使用貸借契約では貸主・借主ともに修繕義務はなく、経年劣化や通常の損耗は貸主の負担となります(民法591条)。

借主の死亡時の対応

賃貸借契約では借主が亡くなっても契約は終了せず、相続人がそのまま借り続ける権利を承継します(民法612条)。使用貸借契約では借主の死亡をもって契約が自動的に終了します(民法594条)。

契約終了(解約)の条件比較

以下は「契約終了(解約)」に関する違いを簡単に説明した表です。賃貸借契約と使用貸借契約では、期間の定めがあるかないかによって終了要件が異なります。

項目 賃貸借 使用貸借
期間の定めなし 借主・貸主ともにいつでも解約可能(民法612条) 貸主・借主ともにいつでも解除可能(民法592条)
期間の定めあり 期間満了まで原則解除不可(正当事由があれば可) 期間満了で自動終了

その他の主な違い

賃貸借契約は対価(賃料)の支払いが必要な有償契約ですが、使用貸借契約は無償で物を貸す契約です。賃貸借では借りた物を第三者に貸す(転貸)には貸主の承諾が必要ですが、使用貸借では原則として転貸は禁止されています。また、賃貸借では敷金や保証金を預けるのが一般的ですが、使用貸借では敷金・保証金は不要です。

違い 賃貸借 使用貸借
対価(賃料) 必要(有償) 不要(無償)
転貸 貸主の承諾が必要(民法612条) 原則禁止(民法593条)
敷金・保証金 一般的に必要 不要

まとめ

賃貸借契約は有償で貸主に大きな修繕義務があり、借主死亡後も契約が継続します。使用貸借契約は無償で、契約終了や修繕負担が軽く設定されている代わりに、借主が死亡すると契約が終了します。契約を結ぶ際は、目的や期間、修繕・解約条件を明確にしてトラブルを防ぎましょう。