民法では賃貸借契約について規定があり、不動産の賃貸借だけでなく、レンタカーや機器のレンタルなど、幅広い物品に適用されます。土地や建物については、賃貸借契約に加え、借地借家法にも規定があり、特に不動産の賃貸借について詳しく規定されています。以下では、賃貸借契約の期間、解約条件、黙示の更新、第三者対抗要件について解説します。

賃貸借契約の期間と解約条件

民法上、賃貸借契約の期間は最長で50年と定められています。仮に50年を超える期間で契約したとしても、その期間は自動的に50年に短縮されます。賃貸借の存続期間を定めている場合、賃借人(借りる人)は契約に定められた時期に建物の返還をしなければいけません。また中途解約も認められません

一方で、契約期間が定められていない場合は、双方のいずれかが解約を申し入れることで終了します。具体的には、以下のように解約の申し入れから一定の期間が経過すると契約が終了します。

  • 土地の賃貸借:解約の申し入れから1年後に契約終了
  • 建物の賃貸借:解約の申し入れから3ヶ月後に契約終了

これにより、双方が合意した場合を除き、賃借人が使用を継続する期間が不当に長くなることを防ぐ仕組みとなっています。

また目的物が消失した場合、例えば火事で不動産が消失した場合は、これによって賃貸借契約も終了します。

黙示の更新

賃貸借契約では「黙示の更新」という特例があります。契約期間が終了しても、借り手がその物を引き続き使用し、賃貸人が異議を唱えない場合、黙示の更新が成立します。黙示の更新が成立すると、契約期間は改めて設定されず、期間を定めていない賃貸借として扱われます。つまり、黙示の更新後は、いつでも解約の申し入れがあれば契約が終了することになります。

この黙示の更新は、借り手が賃借物を使い続けたい場合や、賃貸人が契約終了後も特に問題なく継続を認めたい場合に利用される制度です。

賃借権の登記と第三者対抗要件

賃借権については、不動産の賃貸借において第三者対抗要件が重要です。賃借権が登記されている場合、その賃借権は第三者に対しても効力を持つことが認められます。例えば、AさんがBさんに土地を貸し、その後AさんがCさんに土地を売却した場合、もしBさんが賃借権の登記を行っていれば、Cさんに対して賃借権を主張でき、Cさんの退去要求に対抗することができます。

このように、賃借権の登記は賃借人の権利を守るために重要な手段です。不動産賃貸借では、賃貸人の所有権が変わった場合でも、賃借人が安心して賃借物を使用し続けるために有効な手続きとして利用されます。

敷金

 

借主の義務

賃料支払義務、賃料は特約がない限り、動産、建物及び宅地については毎月末

賃借権の譲渡・転貸

AさんがBさんに家を貸したとします。このとき、Bさんは借主(賃借人)として家を使う権利を持っています。その後、BさんがCさんにこの家を住んでもらうようにするには、次の2つの方法があります。

  1. 賃借権の譲渡
    これは、Bさんが持っている家を借りる権利(賃借権)そのものをCさんに引き渡す方法です。譲渡の場合、Bさんは家を借りる立場から完全に離れ、今後はCさんがAさんに家賃を払うなどの義務を負います。
    例:Bさんが「私はもう住まないので、この家をCさんに借りてもらってください」とAさんに許可を得た場合。
  2. 転貸(また貸し)
    これは、Bさんが家を借りる権利はそのまま持ち続けながら、Cさんにその家を貸す方法です。転貸の場合、Bさんは引き続きAさんの借主であり、Aさんに家賃を払います。一方、CさんはBさんに家賃を払うことになります。
    例:Bさんが「Cさんに一部屋貸したいので、住んでもらいます」とAさんに相談して許可を得た場合。

重要な違いは、賃借権の譲渡ではBさんが借主としての立場を完全にCさんに引き継ぐのに対し、転貸ではBさんが引き続き借主としての責任を負う点です。どちらの方法を取る場合も、原則としてAさん(貸主)の許可が必要です。

転貸借の終了

AさんがBさんに部屋を貸し、Bさんがその部屋をCさんにまた貸し(転貸)している状態です。

債務不履行の場合

  • Bさんが家賃を全く払わなかったため、Aさんが契約を解除した場合。
  • Cさんは「Bさんが約束を守らなかった以上、仕方がない」として部屋を出なければならない。

合意解除の場合

  • Bさんが「引っ越すから契約を終わらせたい」とAさんと合意して契約を解除した場合。
  • Cさんは「私は転貸の権利があるので、引き続きこの部屋を使います」と主張できる。

これを難しい言葉で説明すると、賃借人の債務不履行を理由として賃貸借契約が解除された場合、その解除を転借人に対抗することができる。一方で、賃貸人は賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができないとなります。

判例

なお判例として覚えておきたいのが、借地上の建物の賃貸は借地の転貸には当たらないこと、また借地上の建物の譲渡は従たる権利である借地権の譲渡をともなうものであるため敷地の賃借権の譲渡に当たります。簡単に言えば、建物を貸すだけなら借地権に影響はありませんが、建物を売る場合は土地を使う権利も移る、ということです。

例えば、AさんがBさんに土地を貸して、その上にBさんが建物を建てたとします。この場合、Bさんは土地を使う権利(借地権)を持っています。

  1. 建物の賃貸について
    Bさんが建てた建物を、Cさんに貸す(賃貸する)場合、これは建物を貸しているだけであり、土地そのものを貸しているわけではありません。そのため、借地権を他人に貸す(転貸)には当たりません
  2. 建物の譲渡について
    一方で、Bさんがその建物をCさんに売る(譲渡する)場合、建物だけでなく、その建物を建てている土地を使う権利(借地権)も一緒にCさんに引き継がれることになります。これを法律的には「借地権の譲渡」と言います。つまり、建物の譲渡は土地の借地権の譲渡を伴うものとされます
無断譲渡・転貸

例えば、AさんがBさんにアパートを貸しているとします。契約では、「BさんはAさんの許可なしに、他の人に住ませたり借りる権利を渡したりしてはいけない」と書かれています。ところが、BさんがAさんに許可を得ずにCさんにそのアパートを住まわせたり、借りる権利を渡した場合、これは「無断譲渡」や「無断転貸」となります。

原則として
無断譲渡や無断転貸は契約違反なので、Aさんは「契約違反だ!」として契約を解除できることがあります。

ただし例外として
もし、Bさんの行為がAさんとの信頼関係を壊すほどの重大な問題ではない、つまり「背信的行為とまでは言えない」と認められる特別な事情がある場合には、Aさんは契約を解除できません。

賃貸借契約の終了に関して

賃借人(借りた人)は賃借物を受け取った後に生じた損傷がある場合、賃貸借が終了したときに原状回復の義務があります。ただし通常の使用及び収益によって生じた賃貸借の消耗、賃貸借物の経年変化、賃借人の責任ではない損傷は原状回復の対象外となります。